VWグループの強さ、トヨタの野望

朝礼

世界市場で、2019年上期にもっとも多くのクルマを売ったのは独フォルクスワーゲングループ(VW)グループだった。 その数、536万5300台。次いで、トヨタグループが531万1806万台で、僅差で日産グループが追う展開だ。 近年、こうした販売台数争いではVW vs トヨタの図式となっているが、VWはじつに強い。

では、その粘り強さの秘密は何か?大きく2つある。

ひとつは、ブランド数の多さだ。VWグループの中核はもちろん、フォルクスワーゲン。そこから横展開しているのが、 チェコをベースとするシュコダと、スペインをベースとするセアトだ。 日本では馴染みがないブランドだが、欧州内では「庶民のクルマ」としてすっかり定着している。 プラットフォーム(車体)やパワートレインをフォルクスワーゲンと共有化したうえで、 フォルクスワーゲンとは違ったテイストのエクステリア・インテリアデザインを施す。 以前は、フォルクスワーゲンと比べて走りの質感があきらかに低い印象があった。製造コスト削減がはっきりと分かったということだ。 だが最近のシュコダとセアトは、フォルクスワーゲン同等の走りの品質になってきた。 また、ラリーやレースにもワークス参戦しており、スポーティイメージもつき始めている。 そして、お馴染みのアウディ。最近、日本市場ではボルボなどに少々押され気味だが、 世界市場で見るとやはりトップクラスのプレミアムブランドとして確実な需要がある。 こうしたフォルクスワーゲン、シュコダ、セアト、アウディを乗用車の軸足とした上で、 ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレーというスーパープレミアムブランドを展開する。 トヨタや日産に比べて、明らかにブランド数が多くモデルバリエーションが豊富。 これがVWグループの強さの秘密、その1だ。

もうひとつの秘密が、どの仕向け地でも販売力があるということだ。仕向け地とは、自動車業界用語で、販売する国を指す。 VWグループの主戦場はもちろん欧州。次いで、中国で強い。 70年代~80年代、トヨタなど日系メーカー各社が中国のカントリーリスクを懸念して本格的な中国投資に踏み切れなかった段階で、 VWグループは中国政府関係者とのパイプを強めて一気に投資を行った。 そうした先行投資が、2000年代以降の中国市場の急激拡大によってVWグループに多大なる利益をもたらした。

ただし、VWグループにも弱さはある。アメリカ市場では近年、日系メーカーや韓国メーカーの牙城を崩せていない。 東南アジアでも同じだ。 そうした中でVWグループが躍起になっているのが、EVシフトだ。トヨタ、日産、そしてホンダよりも明らかにEVシフトへのスピード感が早い。 EVシフトへの先行投資もすでに6兆円を超えている。これが吉と出るか凶と出るか?

一方のトヨタはどうだろう。トヨタも中国のBYDと合弁でEV戦をしかける。ハイブリット車もいままでと同様に売る。燃料電池車(水素車)にも挑戦し販売もしている。あらゆるエネルギーのパターンでトヨタも戦略を考えている。個人的には欧州メーカーが考えているようなスピードで世界はEV車にならないと判断している。私もEV車(日産リーフ)を所有しているが、まだまだ問題だらけだと思っている。特にバッテリーの劣化がひどく6年乗るEV車も7割ぐらいの距離しか走らなくなった。実質100キロぐらいだろうか・・・これじゃ話にならない。

VW vs トヨタの競争、さまざまな視点で今後も続きそうだ

               記事  石村忠美